高橋幸宏が率いたMETAFIVEの砂原良徳とLEO今井が、白根賢一(GREAT3)と永井聖一(相対性理論)を迎えMETAFIVE“特別編成”として2021年のフジロックに出演したことをきっかけに、2022年から本格的に活動を開始した4人編成のバンドがTESTSETだ。成り立ちから、METAFIVEと比較されがちな彼らのサウンドは、切れのいいダンサブルなアレンジなど共通点はあるものの、見えてくる景色は当然異なる。
電気グルーヴの元メンバーでもある砂原は、テクノを中心とした電子音楽のマエストロ。自身のソロ・アルバムではテクノへの深い愛情を感じさせている。そこに今井・白根・永井というロック〜ポップスのフィールドで十分なキャリアを積んだ3人が集い、いわゆる化学変化を伴いながらオリジナリティーあふれる音楽が生まれた。特にリーダーを立ててはいないというテストセット。プロデュースとアレンジはバンド名義で、歌詞を含めた曲作りもメンバーがそれぞれにアイデアを出し合って行われているらしい。砂原はミックスやマスタリングで、メンバーが打ち出すイメージを支えることに徹しているようだが、アルバムを貫く統一感に彼の見事な手腕が見て取れる。
2023年にリリースされた初のフル・アルバム『1STST』は、それこそ高橋幸宏の歌声が聴こえてきそうな軽快なシンセ・ポップの味わいも印象的だった。対して本作は、冒頭を飾る「Dry Action Pump」や今井の歌が胸を突く「Deleter」などを聴くとロック色が強まったとも感じられる。とは言え、先行配信シングルの「Vapour Cream」、ドラマーの白根が作曲した「The Haze」といった彼ららしいポップ・チューンも健在だ。中でも耳に残るのがギタリストの永井のペンによる「Neuromancer」。これはそのまま、ウィリアム・ギブスンの著名なサイバーバンク小説に材を取ったものだろうが、そのサウンドは1980年代英国のニュー・ウェイヴをちょいヒネリしたような快作だ。
ここ数年、国内外のドラマやアニメで頻繁に描かれるディストピア。AIの脅威がいまほど現実的ではなかった80年代に垣間見た、理想とも暗黒ともつかない未来とは何だったか。そんなことを思い出しながら、本作のイメージを読み解くのも面白そう。YMO直系とも言うべき格調高い“日本のテクノ”を背負いながら、ノスタルジーを超えて新たな地平にリスナーを誘うTESTSETのメッセージをいまこそかみしめたい。